以前、twitterでこんな記事を拝見しました。
大サビの定義は?”大サビ”を英語に訳すと?
記事の大まかな内容は、楽曲内での「大サビ」の認識について諸説ある、というもの。
それぞれの大サビの解釈は。
プロ以外の人たち → ラストサビそのもの
この認識のズレは個人的にも昔から気になっている部分でもあったし、やり取りの誤解を防ぐために、意図的に「大サビ」という表現を避けてすらいました。
そんな記事の内容に共感しながら読み進めていくと…。
日本語で”大サビ”は、英語で言う”Bridge”だよと伝えたところ、驚いて、でもネットでは大サビについて
このように解説されていると日本語のリンクを送って来られました。
え、、
ブリッジって…
間奏のことじゃないの!?
今まで会話上、間奏のことをブリッジと表現して誤解が生じたこと無かったハズ。。何故なんだ!!??
…と、いうわけで審議を探るべく、アマゾンの奥地へ足を踏み入れるのであった。
ブリッジにまつわる諸説
ありとあらゆるサイトを巡り巡ったところ、ブリッジという言葉にはかなり様々な解釈があるようです。
まとめて挙げてみると…。
・間奏説
・C(D)メロ説
・サビ説
あたりが有力な模様。
冒頭で紹介した「大サビ」に関しては、これもまた解釈が異なるようなので、ここでは「C(D)メロ」と定義します。
サビがCセクションだった場合に本来のCメロがDメロとして扱われることもある為、C(D)と表記しました。
アンケート結果
2018年に公開した本記事は、最終的にブリッジ≒間奏と結論付けて終わる格好となりました。
おかげさまで「ブリッジ 曲」で検索することでもGoogle上位表示されるようになり、そこから5年が経過。
本記事の公開当初のアンケートと2023年に再度実施した結果を見比べてみましょう。
↑こちらは2018年に取らせて頂いた統計。
面白かったのは4択全てに票が入っていたこと。
そして多い少ないに関係なく、それぞれが個々の解釈をしていることが良く分かりました。
そしてこちらが2023年に取ったアンケート結果。
結果は…
・Bメロ→26.9%
・間奏→38.5%
・C(D)メロ→26.9%
・サビ→7.7%
となりました。
実に5年越しに再調査しましたが、驚くくらい票の分かれ方や比率が前回と同じでした。
やはり、ブリッジは間奏という認識を持っている方が多いようです。
以下の項では、何故このように個々の意見が分かれたり、認識の相違が出て行ったのかを解説していきます。
本来はBメロ説が有力
諸説ある中でいろいろ調べていくと、「ブリッジ」の根源はどうやらBメロにあるようです。
昔から現代に至るまでの曲構成の進化と共に、ブリッジの意味と役割をまとめてみました。
ABパートの2部構成から生まれた、本来の「ブリッジ」
昔の日本のポップスはAメロ→Bメロの二部構成でした。どのサイトでも例として挙げられていたのは坂本九さんの「上を向いて歩こう」ですね。
その他は、セーラームーンのオープニング曲でも有名な「ムーンライト伝説」もこの例に当てはまりそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=u8SNLQh4CUw
このAメロとBメロが、どのような順番で繰り返されていくのかは楽曲にもより異なりますが、今で言うところのCパート、つまり「サビ」に当たるパートは無く、これは日本と海外の楽曲でほぼ共通だったようです。
この時代のBメロの役割は、Aメロが繰り返される中で楽曲に変化をつける為のセクションとして機能していたようです。つまりBメロはAパート同士を橋渡しする、まさに「ブリッジ」そのものだったようです。
3部構成でもブリッジはBメロ
それに対し、現代のポップスでは主にAメロ→Bメロ→サビの三部で構成されている事がほとんどかと思いますが、その3部はそれぞれ英語だと…
Bメロ→bridge
サビ→chorus
と表現します。
ちなみにサビが「chorus」と呼ばれるのは、楽曲が最も盛り上がる部分でコーラスパートが分厚くなることに由来しているようですが、これは我々日本人同士でも楽曲の1番を「ワンコーラス」と呼んでいる所以でもあるかと思います。
それはさておき、3部構成においてもやはりブリッジというのはBメロの事だったようですね。
何と何を橋渡しするのかという「ブリッジ」という言葉の掛かる部分が2部構成の時とは異なるという事のかな、と思われます。
ブリッジに対する誤解が生まれたのは何故?
そうだとするならば、Bメロ以外がブリッジだという解釈が広がったのは、一体何故なんでしょうか。
調査と考察を交えて書いていきたいと思います。
ブリッジ=サビという解釈
今でこそ「サビ」という言葉は、楽曲のもっともインパクトがあり美味しい部分という解釈がありますが、実は本来の解釈は、現代のそれとは異なっていました。
wikipediaから代表した定義を上げていくと…。
・冒頭のフレーズとは異なる楽節
・楽曲の中ほどから、曲想の変化する部分
等々、定義はかなり様々ある模様。
前述したようなAB構成の楽曲の場合は、Aパートではない部分、つまりBパート=サビという解釈が多くあったようです。
また、下記サイトではこんな説も紹介しています。
https://chromatic.jp/about-music/
日本では『語り物』や『謡曲』の中で一番盛り上がる
「聞かせどころ」を『さわり』と呼んでましたが、
それ(さわり)を曲の冒頭部分とした誤用が広まった為
本来「盛り上がる」場面で、反対の意味である「さび(寂)」を
誤用の上塗り的に用いた…と考えられています。
誤った解釈がキッカケで、楽曲の盛り上がる部分に対して「サビ」という言葉が使われるようになったのが現代のサビの解釈に繋がっているようです。
まさかサビって寂しいの「寂」だとは、正直驚きでした。(諸説あると思います)
そしてABの2部構成の時からB≒サビという解釈もあり、サビ=ブリッジという解釈に変わっていった可能性が高そうです。
ブリッジ=間奏という解釈
アンケートでも最も多かったブリッジ=間奏説について、ネット上には同じような人はあまり見受けられませんでしたが、以下の質問サイトに有力な情報が載っていました。
引用元:https://okwave.jp/qa/q2316858.html
「ブリッジ」とはどの部分を指しますか?という質問に対し、
「ブリッジ」は、経過句とか、推移とかいいますね。導入部もですかね。
要は、不安定な感じの部分です。
なので、「ブリッジだけ」では、曲として独立してませんね。感じとしては、1番と2番をつなぐときの短いフレーズ。
また、次の楽節へ入る前の助走。導入。予感・・・など。
と回答しています。
また、この方は回答の中で「ブリッジと間奏はイコールではない」という趣旨の事も言っています。ブリッジと間奏を同義としてしまうと、やはり若干ニュアンスが異なってきてしまうのでしょう。
しかし、僕のアンケートに間奏と票を入れた方々はおそらく間奏そのものの事を指して票を入れてくれたのではないでしょうか。もちろん僕もそのうちの1人です。
これあくまで個人的な意見ですが、日本人はBメロのことを「ブリッジ」と言わずに「Bメロ」と表現する人が多いため、ブリッジという言葉に対して、「AメロでもBメロでもサビでもない…→つまり間奏!」と言った暗黙の了解が生まれたようにも思えます。
ブリッジの橋渡しの意味が、歌同士に対するもの…つまり間奏という解釈に、時代と共にずれ込んでいってしまったのではないか…?といった予測と共に、次の項に進みましょう。
ブリッジ=C(D)メロという解釈
さて、Bメロ≒サビ→ブリッジという解釈となった予想がついたところで、なぜC(D)メロまでもがそのような解釈になっていったのでしょう。
参考になった回答をまとめてみました。
Q:歌で、2コーラスぐらい終わってから、今まで出てこなかったメロディーが1回だけはいることありますよね。
英語では、この部分を「bridge(ブリッジ)」というんですが、日本語では何ていうのですか?A:英語では、ご質問のようにbridgeという場合もあります。ただし、これは二部形式の「verse-chorus」でワンコーラス(英語ではone verseか?)で完結しているような場合でないと使えないですね。
Q:ポップスで言うところの「サビ」と「ブリッジ」の定義を教えてください。
A:時代が進んで、楽曲の展開は複雑化しました。今や1コーラスだけで3つ、4つのメロディが登場するのは当たり前です。今ではメインテーマとなるメロディは、Aメロ、Bメロなどと展開したその後に「満を持して」という感じで登場することが多くなりました。そこを「サビ」と呼ぶようになり、また、さらなる変化をつけるために、例えば2コーラスを終えた後に、全く新しいメロディを挿入することも珍しくなくなり、これを「ブリッジ」と呼ぶようになりました。
引用元:https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1192089.html?from=recommend
どちらの回答も、時代と共に複雑化した曲展開の中でブリッジの在り方や役割が変わっていった。という趣旨の説明かと思います。
そういう意味では、間奏の項で説明した推測と、成り行きはかなり似ているようにも思えます。
例えばもし海外でBメロを「VerseB」と表現した場合、本来Bメロであるはずのブリッジは自ずとCメロ(大サビ)に対して割り当てられたようです。
BメロもCメロも違うセクションなのに「ブリッジ」としてしまっては区別が付かないからでしょう。
多様な変化を遂げたブリッジの役割
概ねどの説でも、ブリッジはその名の通り「橋渡し」として解釈されることが多い模様。
時代の変化と共に、英語や日本語それぞれのセクションにおける定義づけが生まれていく中、楽曲の構成も複雑化し、ブリッジの橋渡しとしての役割が国やジャンルごとで細分化されてしまったものと思われます。
ChatGPTに聞いてみる
最後に最近話題のChatGPTの見解を聞いてみましょう。
少し質問と会話をしてみましたので、その内容を抜粋してみます。
インタールードは、曲の中で、主要な部分から離れたり、曲の別の部分への移行を担当する部分を指します。インタールードは、曲の構造上、主要な部分から離れるために使用されます。
一方、ブリッジは、曲の構造の中で、主要な部分から一時的に離れるために使用され、異なるメロディやコード進行などを持つ部分を指します。ブリッジは、サビの前後に位置し、曲の構造上、主要な部分から一時的に離れるために使用されます。
インタールードは曲の中で様々な場面で使用される可能性がありますが、ブリッジは曲の構造上、特にサビの前後に位置することが多いです。
- 曲の構造: ブリッジは、曲の構造の中で、主要な部分から一時的に離れるために使用されます。
- メロディやコード進行: ブリッジは、主要な部分とは異なるメロディやコード進行を持っていることが多いです。
- 歌詞: ブリッジは、主要な部分とは異なる歌詞を持っていることが多いです。
- 雰囲気や感情: ブリッジは、主要な部分とは異なる雰囲気や感情を持っていることが多いです。
ただ、これらは一般的な要素であり、音楽の構造によって異なることもあります。
代表的なブリッジが取り入れられた曲には、様々な曲がありますが、いくつか例を挙げます。
- “Bohemian Rhapsody” by Queen: この曲は、有名なオペラパートを持ち、その後にブリッジが登場します。
- “Stairway to Heaven” by Led Zeppelin: この曲は、イントロから始まり、サビに繋がるまでにブリッジが登場します。
- “Hey Jude” by The Beatles: この曲は、サビの前にブリッジが登場し、サビに繋がります。
- “I Will Always Love You” by Whitney Houston: この曲は、サビの前にブリッジが登場し、サビに繋がります。
- “Billie Jean” by Michael Jackson: この曲は、サビの前にブリッジが登場し、サビに繋がります。
ただ、曲によっては、ブリッジが明確に分かりづらい場合もあります。曲の作り手やアレンジャーの意図によって、ブリッジがどのように取り入れられるかは異なります。
という事でした。
特に最後の項目では往年の名曲ばかりが取り上げられました。
説明を踏まえてそれぞれの箇所を聞いてみましたが、この5曲のうち、これまでの説明に最もかなうと思われた箇所は1.の『Bohemian Rhapsody』かなと感じました。
代表して一つだけ公式動画をシェアします。
※ブリッジ(4:09~)の少し前から始まります。
これは明らかに前後の曲調から離れ、独立した1つのセクションのように感じられます。
また、それ以外の曲についてはサビに向けての一つの通過点という感じで、言うなればBメロ的な役割という印象が多かったように思います。
比較的あっさりとした間奏、とでも言うべきでしょうか。
(「Stairway to Heaven」に関しては、説明のあった箇所よりも、むしろギターソロとアウトロの間のセクションの方がよっぽど独立した印象でしたが笑)
ChatGPTの説明も現時点では完全ではないかとも思いますが、説明のあったように作曲者やアレンジャー次第でブリッジにもそれ以外のセクションにもなり得る、と結論付けるのが良さそうです。
あとがき
実際の歴史と調査/AIの意見も交えてお届けしてみました。
改めて内容をまとめると…
・Bメロ=サビと解釈されていた時代があった
・現代のサビの有り方は、昔の誤解から生まれた
・時代の流れと共に、ブリッジの役割が変わっていった
・現在のブリッジは「主要部分とは異なるセクション」
諸説あり過ぎたブリッジの意味ですが、最後はChatGPTの説明で一か所に落ち着いたように思います。
異論や補足回答などあれば、下のシェアボタンからのSNS投稿もお待ちしています。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました!